桜の時期も間もなく終わり、徐々に熱くなって来る頃ですね。紫外線が最も多くなる時期が
5月ということで、梅雨の前に暑さの方が一足先にやって来るということですね。
ところで、令和7年4月15日、厚生労働省は「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」を交付しました。
本改正は、近年増加傾向にある職場での熱中症死亡事故に対応するための内容となっており、次の3点を
罰則付きで事業者に義務付けるものです。
【改正により義務化される内容(令和7年6月1日施行)】
① 早期発見のための体制整備
② 重篤化を防止するための措置の実施手順の作成
③ 関係作業者への周知
本規則の対象となる作業場は、「WBGT(暑さ指数)基準度28度以上、又は気温31度以上の
環境下で、連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施が見込まれる作業」となっています。
工場や建設等の現場作業が発生する事業者さま以外には耳慣れないWBGTですが、これは
作業毎に定められた身体代謝率に対し、気温(室温)が何度以上で危険となるかを示した
ものです。
主な作業とその基準温度は次のようになっています。
作業の例 | WBGT基準値(暑熱非順化者) |
〇事務作業(軽い手作業、タイピング等) | 29℃ |
〇釘打ちや盛土、腕や脚、胴体を使う作業 | 26℃ |
〇ショベル作業、ハンマー作業、重量物を荷車や手押し車で押したり
引いたりする作業 |
23℃ |
〇最大速度で動く活動、激しくシャベルを使ったりする作業 | 20℃ |
上記のとおり、事務作業であっても室温が29℃以上、1時間連続又は1日4時間の作業が発生する場合には、
対策が必要ということになります(エアコンを付けない状態では、ほぼ全ての事業所が該当しますね)。
具体的な対応方法としては、次のようになるかと思います。
① 気温(室温)と、行う作業に応じたWGBT基準との関係性を把握。
② 屋内の場合は、直射日光が入らないようにする、エアコンをかけて室温が基準値以内に収まるようにする。
屋外の場合は、簡易的な屋根を設ける等、直射日光及び照り返しを遮る工夫をする。
③ 高温多湿作業場の場合は、上記対策に加え、近隣に冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい場所を用意。
④ いずれの作業中も、水分及び塩分の補給、休憩はこまめに行うよう指導する。
⑤ 体調に変化の見られる従業員は、すみやかに医師等の診断を受ける等の対応をとる。
このほか、管理職においては、部下の睡眠不足や体調不良等による影響を常に頭に入れながら、気配りと目配りを
欠かさないことが重要です。場合によっては日常生活についての指導が必要となるかも知れません。
本規則に違反し従業員に熱中症の労災事故が発生した場合、事業主は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が
科せられることとなります。
普段、外での業務があまり発生しない事業を行っている事業主さまの中には、「何となくエアコンを付けておけば
大丈夫」といったお考えの方もおられるかも知れませんが、万が一の場合には人命にかかわる事態となるものですので、
くれぐれもご注意いただきたいと思います。
過ごしやすい環境での作業の方が業務効率も上がりますしね!
厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」のページ